2010年9月18日土曜日

何もないところに欲を作り出す――「ブラウザ三国志」のビジネスモデル

 無料経済とも言われるインターネット上で、オンラインゲームがなぜユーザー課金に成功できたのか? それは、「欲を作り出すのがうまいビジネスだからだ」と筆者は考える。洋服でも家具でも、バーチャルなものを買う行為には共通点がある。共通点とは「最初からバーチャルアイテムが欲しくて始める人はいない」ということである。バーチャルな高級肥料が欲
しくて、農園アプリを始める人はいないはずだ。

【画像:ソーシャルゲームのビジネスモデルの仕組み】

 「ゲームとしてよくできている」「動画として面白い」などというコンテンツ品質は、ただそれだけではマネタイズに結びつかない。マネタイズの条件はユーザーに、ゲームを始めてから財布を開くまでの心境の変化を起こさせることである FF14 rmt
。その変化を、「フック(始める理由)」「リテンション(続ける理由)」「マネタイズ(支払う理由)」と呼ぶことにする。この3ステップを途切れさせないように注意しながら、ユーザーの欲を醸成していく。お金を払ってまで使い続けたいと思わせる“何か”を作り出すのだ。

 今回のコラムでは、フック?リテンション?マネタイズ理論を使ってソーシャル
ゲームの構造を図解。その具体例として、最近人気を集めているmixiアプリ「ブラウザ三国志 for mixi」を紹介する。

●ソーシャルゲームの二重構造

 ソーシャルゲームのビジネスモデルを描くと下図のようになる。ポイントは、SNS(ソーシャル?ネットワーキング?サービス)にもフック?リテンション?マネタイズの仕組みがあり、その上にソーシャル
ゲームが乗っているという二重構造である。
 ※bizmakoto.jp/makoto/articles/1002/09/news003.html

 「簡単なゲームだからビジネスも簡単」というわけにはいかない。SNSとソーシャルゲームの二重構造により、ゲームへの支払いというゴールにたどり着くまで、これだけの道のりがかかるのだ。「ユーザーの気持ちと欲を育てる」道のりも長くなり、従来
のオンラインゲームよりむしろ難しい点もあるかもしれない。

 もともとSNSは、同級生などのリアルの人間関係をフックとして集客するビジネスである。そこに日記という継続性が求められるコンテンツを置くことで、ユーザーの定着(リテンション)を促している。そして、自ら情報発信をしたり、SNSだけの友人を作ったりと、SNSでの活動が活発になる
とリテンションが高まる。SNSコミュニティは、リアル友人関係とSNSでの人間関係を合わせたものとして形成される。

 ソーシャルゲームは、このSNSコミュニティをフックに利用する。自社ゲームへの定着には、日記とは違うユーザー交流、継続性を持たせたゲーム作り、ゲーム内コミュニティの育成などの方法がある。その先のマネタイズのフェーズでは
、現行の広告収入やアイテム課金のほかに、ゲーム自体の有料化やプラットフォームとの折衷的な料金システムなど、さまざまな可能性が考えられる。

 現在、広告単価やレベニューシェア(利益分配)の割合など具体的な料金が話題になるものの、リテンションからマネタイズへの「流れ」についてはほとんど議論されていない。重要なのは、フック?リテン
ション?マネタイズの各フェーズがうまく流れるように設計することである。図中では例として、1つの「流れ」を矢印で示している。どういう「流れ」を作るかが、そのゲームの基本設計となる。もちろん、これからさまざまなゲームが出ることで、新たな矢印が描かれるだろう。

 今回は、「ゲームの友人」から「アイテム課金」につなげる流れに注目して
、ブラウザ三国志の事例を考えたい。前回も述べたように、オンラインゲームの楽しさは「見知らぬ人と一緒にプレイできること」にある。そこでしか会えない「ゲームの友人」がいるからこそゲームへの執着が生まれる。それが、何もないところに「欲」を作り出す鍵となるのだ。SNSのリアル人間関係と、ゲーム別に形成されるバーチャル人間関係をどうマネジメン
トするか、この新しい課題について考えてみよう。

●ブラウザ三国志の魅力

 広告収入が主流と考えられているソーシャルゲーム業界において、ユーザー課金を正面から狙ったのが、AQインタラクティブの「ブラウザ三国志」である。もともとSNS用に作られたものではないが、2009年8月にmixiアプリとして「ブラウザ三国志 for mixi」がリリースされ
た。「ブラウザ三国志 for mixi」では、2010年1月末現在の登録ユーザーは45万6000人、この1カ月で17万人の伸びをみせている人気ゲームだ。

 配下となる武将を育て、施設を建設して自分の城下町を作り、ほかのユーザーと合戦をして陣地を広げていくゲームである。武将はカード式になっており、他ユーザーとトレードすることもできる。このゲームの究極
の目的は、ゲーム世界で天下をとることである。天下をとるには、武力で戦うだけでなく、同盟を組んで味方を増やすなど、ユーザー同士の外交が必須となる。

 ブラウザ三国志では、ゲームアイテム課金をしている。城下町での施設建設には数時間かかるが、その建設時間を省略する「即完了」に150CP(150円)など、ゲームを続けていく上であったらよい
と思うような機能やさまざまなバーチャルアイテムが整備されている。上級者になってくると、強い武将カードが当たるくじ引き(ガチャ)も人気だ。

 このゲームがマネタイズ志向であるのは、こうしたきめ細かいアイテム販売システムだけではない。課金を可能にしているのは、SNSコミュニティとバーチャルのゲームコミュニティとのバランスのとり方
が絶妙であるからだと、筆者は分析している。

 ほかのアプリと同様に、SNS友人を招待して一緒にプレイすることもできる。しかし、陣地を増やし天下をとろうとすると、数百人規模の仲間が必要となる。そのため、ゲームを進めていくにつれ、通常のSNS友人だけでは立ち行かなくなってくる。また、招待制を使っても、友人の隣に城を構えることはできず
、ランダム配置となるため、必然的に近所の他人と付き合わなければならない状況に置かれる。

 このゲームをしていると「遠くの親友よりも近くの他人」ということを痛感させられる。AQインタラクティブの石井武ネットワークコンテンツ事業部長は「同盟を組むか対戦するか、他ユーザーと接点が生まれるようなゲーム作りをしている」と語る。


●ブラウザ三国志におけるフック?リテンション?マネタイズ

 ブラウザ三国志の良さを、フック?リテンション?マネタイズの順にまとめてみよう。まず、フックとしての分かりやすさである。三国志というなじみのあるテーマもさることながら、領地が広がる様子や城内に建設される施設など目に見える成果があり、何をするゲームか想像がつきやす
い。作物を育てる農園系アプリなどにも共通する分かりやすさである。

 次にリテンションであるが、進めていくうちに非常に奥深いゲームであることが分かる。分かりやすさだけでは、すぐに飽きがくる。ゲームは初心者にとって始めやすく、上級者にとっても楽しめるという、分かりやすさと奥行き感の両方が必要とされる。

 施設を建設する順
序、陣地をどう広げていくか、武将のスキルアップ、誰と同盟を組むか、勝ち馬に乗るのか自分が天下を目指すのか……。このように考えるべきことが多いと、攻略や情報交換のためのWebサイトが登場したり、掲示板にスレッドが立ったりして、バーチャルコミュニティが活性化される。何でも親切に分かりやすいことが良いわけではない。適度に分からないことがある
と、話題を投下することができる。このゲームが「ハマれるアプリ」と称されるのには、こうしたコミュニティ回りの良さも貢献している。

 最後のマネタイズ局面では、他ユーザーとの競争と協力が効いてくる。最初は、無料のまま1人でコツコツとプレイしていても結構楽しい。だが、大戦争になり、今まで築き上げた自分の城が攻められたらどうだろう。
あるいは、同盟の仲間を助けるためにすぐに増兵が必要になった時、「何としても早く」と願うだろう。守りたいものができたとき、何もないところに「欲」が生まれるのだ。

 「欲」というと聞こえが悪いかもしれない。ただ、ゲームでマネタイズするからには、それと同時にユーザーの「納得」を引き出さなければならないと思う。「ここまで楽しんだの
だから、このくらい払ってもよい」と思える気持ちも含めて、企業は提供しなければならない。

 そうした納得感を持ってもらうために、難易度や複雑性の設定、他人を必要とする程度、1日どのくらい遊んでほしいのか、そうしたことをすべて考慮にいれて、ゲームバランスを決めていく。

 「攻められても自分の城が壊滅することのない仕組みに
したり、4カ月ターンで新しいゲームになるなど、負けても挽回でき、後から始めた人も追いつけるゲームバランスを考えている」と石井氏は言う。ブラウザ三国志はゲーム運営ノウハウが生かされた、本格的なソーシャルゲームの登場という感がある。【野島美保】

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引用元:RMT ワイアード リアルマネートレード総合サイト

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